ガラス新構法のご紹介

大社プレイス
連続する空間
ハイパー・スペック・ビル
大社文化プレイスは出雲大社の参道近くにある。人口わずか1.6万人の町のホール+図書館である。
町役場、消防署、中学校、民家、河川等に面する複雑な形状の敷地に対応すべく、平面・立面方向とも曲面を用いて穏やかでフレキシビリティに富んだ空間がデザインされた。
多様な要素を統合する散策可能な周遊路に面する外壁は、コンクリート壁、透明ガラス、プロフィリット、ファインフロア等漸次変化しつつ内/外を柔らかに隔てて、明るく親しみやすい表情をつくり出している。屋根も墨入りのPC板によって瓦屋根の多い周辺民家との調和がはかられた。
内部は柔らかな間接光に包まれた空間内に変化に富んだ多様な行為の場が用意されている。ホールと図書館も、また各機能に応じた諸室も壁で隔離するのでなく、極力相互にコミュニケーションが生まれるべく連続する空間が意図された
伊東豊雄
ファサード
ファサード内観
(共通ロビーよりエントランスを見る
photo by Ohashi Tomio
ハイパー・スペック・ビル
この建物では、1.山陰の曇天の多い気候風土の中、光あふれる明るい雰囲気をつくりだすため 2.一つ屋根の下で繰り広げられる様々なアクティビティが見えあうようにするため 3.内外の空間に連続性を持たせるため、ガラスが多用された。 メインエントランスのファサードは、人々を招き入れるよう横方向の勢いのある大きな割付とされた。
ガラスは上下2辺支持で取り付けられ、ルーバーの役割も果たす木製横方立てで保持されている。この横方立ては4500ピッチの柱割に合わせたスパンの中間部で上から吊られていて、細く、透明度の高いファサードを実現している。
なお、コスト的配慮から、足元以外は全て同じ8ミリ厚のガラスであるため、ガラスはW寸法は同じ4500だが、H寸法は風圧強度から上に行くほど小さくなっている。
伊東豊雄
溝型ガラス・プロフィリット
図書館外観
photo by Tominaga Ken

ラウンジうらうら内観
photo by SHINKENCHIKU-SHA
ハイパー・スペック・ビル
図書室とラウンジうらうら部には、単体Wが262mmと小さく、縦使いにすることで曲面になじませられ、ダブル構成なら高さ約5mまでサッシレスにできるプロフィリットガラスが採用された。
ダブル構成で断熱・遮音性能を確保されつつも、透明ビニール管のバックアップ材などで軽快ですっきりとした印象をもち、内外の様子を曖昧に映し出す柔らかな表情のファサードとなっている。
ラウンジうらうら(最大高さ約9m)では中間に無目材を入れているが、図書館南面(最大高さ約5.3m)は無目材なしで構成している
防火硝子・パイロクリア
図書館入口部
photo by Ohashi Tomio
ハイパー・スペック・ビル
図書館入口の連続した空間を実現するため透明にすることが意図された。 しかし、ここは防火区画とすることが必要であることに加え、天井が緩やかにカーブを描いている。そのため通常の防火シャッターや下部に採用した38条認定を受けた防火スクリーンのみでは、天井との取り合いが悪い。 そこで、上部には防火性能をもちつつ透明なワイヤレス防火ガラスのパイロクリアが用いられている。ただし甲種防火戸として個別認定を受けたサッシ枠を極力見せないような納まりにするべく、意匠的な配慮がされている。
ホール外観(左側の光壁部分)

ホール内観
photo by Ohashi Tomio
ハイパー・スペック・ビル
防火性能と共に高い遮音性能が必要な「だんだんホール」の壁面にも、ホール空間に自然光を採り入れて連続させるため、クリアな視界を確保できるワイヤレス防火ガラスのパイロクリアが用いられている。
防火性能は、「フロート板ガラスによる2重サッシ+防火シャッター」でも確保できるが、シャッターの納まりやメンテナンスが問題だ。そのため、「パイロクリア+フロート板ガラスによる2重サッシ」として、コストダウンとメンテナンスフリーが実現された。ホール内側には遮光用ロールスクリーンが設けられている。
なお、上部は、この部分の屋根の挙動に対応しつつ遮音・防火性能を確保できる納まりとなっている。
建築データ
Architecture Data
名称 大社文化プレイス
所在地 島根県簸川郡大社町杵築南1338-9
面積 敷地面積:20,400.17㎡、建築面積:5,567.37㎡
延床面積:5,847.36㎡
構造・階数 RC造・一部S造、地上4階
寸法 最高高:21,769mm、主なスパン:3m×4.5m
設計 建築:伊東豊雄建築設計事務所
構造:佐々木陸朗構造計画研究所
設備:総合設備計画
外構設計:日本工営
積算:団積算事務所
音響:永田音響設計
照明計画:小泉産業LCR
劇場計画:日本大学理工学部本杉研究室
舞台照明計画:ライティングカンパニーあかり組
家具・サインデザイン:K.T.Architecture
ロゴ・CIデザイン:マツダオフィス
監理 建築:伊東豊雄建築設計事務所
構造:佐々木陸朗構造計画研究所
設備:総合設備計画
施工 建築:鴻池組・中筋組・岩成工業特別共同企業体
空調・衛生:三晃空調
電気:大成電気水道工業
舞台機構:森平舞台機構
舞台音響:不二音響
舞台照明:松村電機製作所
周辺整備工事:岩成工業(解体)・八宝建設(建築)・中筋組(外構)
設計期間 1996年5月~1997年3月
施工期間 1997年9月~1999年7月
利用案内 開館時間:うらら館(大ホール、小ホール、会議室) 午前10時~午後10時
:町立図書館でんでんむし 午前10時~午後7時
休館日:月曜(祝日の場合はその翌日)
電話:0853-53-6500
交通:JR出雲市駅より一畑電鉄バス出雲大社行き「吉兆館前」下車徒歩5分
掲載誌 日経アーキテクチュア1999年12月27日号、GAJAPAN42、新建築2000年1月号
使用ガラス概要
技術担当(総括):日本板硝子・池内清治
フロート板ガラス 8・10ミリ
使用場所:エントランスファサード
担当:日本板硝子・鈴木卓
品種・寸法・重量
262mm
そで高さ 60mm
標準厚さ 7mm
最大長さ 5000mm
重量 約6.5kg/m
光学特性・熱的特性・遮音性能
施工法 可視光線透過率 熱貫流率
シングル構成 89.0% 4.8Kcal/㎡h℃(5.5W/(㎡k)
ダブル構成 81.0% 2.3Kcal/㎡h℃(2.7W/(㎡k)
*平均遮音率はDIN52210による試験データ(100~3200Hz)
プロフィリットガラス
使用場所:図書館南側・ラウンジうらら
担当:日本板硝子・榎本貴伸/日昌グラシス・國友重弘
乙種防火戸・甲種防火戸に利用できる耐熱強化ガラス「パイロクリア」の特性
呼び厚さ
(ミリ)
熱膨張率
(10-6/℃)
ヤング率
(105kgf/c㎡)
比重 モース硬度
(度)
耐風圧強度/許容荷重
(kgf)
6.5 8.5 7.3 約2.5 約6.5 1,600以上
8 8.5 7.3 約2.5 約6.5 2,400以上
※許容荷重:破損確率1/1,000の際の許容荷重を示す
(参考)網入磨板ガラス(6.8ミリ)440kgf・(10ミリ)850kgf
品種表
品種 色/パターン 呼び厚さ
(ミリ)
最大寸法
(mm)
最少寸法
(mm)
パイロクリア6.5 フロート板ガラス クリア 6.5 2,400×1,200 300×200
パイロクリア8 フロート板ガラス クリア 8
10
(熱吸ブルー除)
12
2,700×2,000
熱線吸収板ガラス ブロンズ 2,400×1,800
グレー
グリーン
ブルー
熱線反射ガラス
(レフライト)
レフライトS
レフライトB
レフライトSブロンズ
レフライトSグレー
レフライトSブルー
高性能熱線反射ガラス
(レフシャイン)
透明タイプ 標準色
Sシリーズ
914×304
標準色
Tシリーズ
準標準色
Tシリーズ
準標準色
Cシリーズ
914×508
※日本板硝子がパイロクリアを使用した甲種防火戸(パイロドア、パイロスクリーン)で取得している仕様は、透明タイプ(8ミリ)のみ