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窓の断熱・遮熱を高めるLow-Eガラス入門|種類・選び方・効果まとめ

窓ガラス研究所 窓ガラス研究所

窓リフォームを検討していると、「Low-Eガラス」や「Low-E複層ガラス」という言葉を目にすることが増えます。しかし、実際にどのようなガラスなのか、何がメリットなのかは意外と知られていません。このページでは、Low-Eガラスの仕組み、種類、一般的な複層ガラスとの違い、選ぶ際のポイントを分かりやすく解説します。

 1. Low-Eガラス(Low-E複層ガラス)とは?

Low-Eガラスとは、ガラス表面に「Low-E膜」と呼ばれる金属膜(銀や酸化錫など)をコーティングしたガラスのことです。Low-E=Low Emissivity(低放射)を意味し、赤外線の放射を抑えることで断熱性や遮熱性を高められるのが特長です。一般的には、複層ガラスの内側にこのLow-E膜を配置したものを「Low-E複層ガラス」と呼びます。

2. “エコガラスとは

エコガラスは、一般社団法人 板硝子協会の会員であるAGC(株)、日本板硝子(株)、セントラル硝子プロダクツ(株)の3社が製造するLow-E複層ガラスの共通呼称になります。この主要ガラスメーカー3社が製造するLow-E複層ガラスを総称して「エコガラス」と呼んでいます。

エコガラスのマークが窓ガラスに印字されている場合、その窓にはLow-E複層ガラスが使用されていることを意味します。また、エコガラスのマークはガラスの断熱性能によって下記の種類に区分されます。

JIS R 3209-2018複層ガラスに規定される「断熱複層ガラス」の断熱性能と同等の性能を持つものをいいます。

3. 一枚ガラス・複層ガラス・Low-E複層ガラスの違い

熱は「伝導」「対流」「放射」の3つの方法で伝わります。

  •  伝導 : 物質同士が直接触れている部分から熱が移動する現象。金属が熱くなりやすいのは伝導によって熱が広がるため。

・例1  熱いマグカップを持つと手に熱が伝わる

・例2  金属のスプーンを熱いスープに入れると先端から柄まで熱くなる

  •  対流 : 空気や水などの流体が動くことで、暖かい部分と冷たい部分が循環しながら熱が運ばれる現象。

・例1  エアコンの暖房で暖かい空気が上昇し、部屋全体が暖まる

・例2  鍋の水を加熱すると底から暖かい水が上昇してぐるぐる動く 

  •  放射 : 赤外線などの電磁波として熱が空間を介して伝わる現象。触れなくても太陽から熱を感じるのは放射のため。

・例1  太陽に当たると離れていても暖かさを感じる

・例2  ストーブの前に立つと直接触れなくても暖かい

ガラスの種類により、これらの熱移動を抑える効果に次のような差があります。

■各種ガラスタイプの熱の伝わり方抑制効果

ガラスの種類

伝導 対流 放射

一枚ガラス

× × ×
複層ガラス

×

Low-E複層ガラス

複層ガラスでも「放射」による熱移動は抑えにくいのですが、Low-Eガラスは金属膜の働きで放射熱を反射し、より高い断熱性・遮熱性を実現します。

  • 断熱性とは・・・ 断熱性とは、室内の暖かい空気を外へ逃がしにくくする性能のこと。冬の冷え込みを抑え、暖房効率を高めることで、室内の温度を安定させやすくします。寒さ対策や省エネ性の向上に効果的です。
  • 遮熱性とは・・・遮熱性とは、外から入ってくる太陽の熱をガラスでカットし、室内への侵入を抑える性能のこと。夏の強い日差しによる温度上昇を防ぎ、冷房効率を高めて涼しい室内環境を保ちやすくします。

■Low-Eガラス・複層ガラス・真空タイプの比較表

真空Low-Eガラスも含んだ各ガラスの性能について、分かりやすく比較表にすると下図のような星取表になります。

項目 一枚ガラス 複層ガラス Low-E複層ガラス 真空タイプLow-E
断熱性 ★☆☆ ★★☆ ★★★ ★★★★
遮熱性 ★☆☆ ★★☆ ★★★ ★★★★
結露軽減 ★☆☆ ★★☆ ★★★ ★★★★
防音性(ガラス単体) ★☆☆ ★★☆ ★★☆ ★★★★

※★は相対評価

■Low-Eガラス・複層ガラス・真空タイプの比較表(省エネ効果等)

真空Low-Eガラスも含んだ各ガラスの性能について、省エネ効果、用途等を比較します。

項目 一枚ガラス 複層ガラス Low-E複層ガラス 真空タイプLow-E
省エネ効果 中〜高 高め
おすすめ用途 最低限 入れ替えの基本 断熱・遮熱性能を上げたい 高性能・寒冷地・結露が多い家
構造と特長 ガラス1枚構造 ガラス2枚+空気層 金属膜で放射熱をカット 真空層の効果で最高の断熱性
向いている地域 どこでも 一般地域 寒冷地・暑熱地域 寒冷地・結露対策が必要な地域

 

4. 断熱タイプ(日射取得型)と遮熱タイプ(日射遮蔽型)

上記に触れたLow-E複層ガラスには大きく2つの機能タイプがあります。

断熱タイプ(日射取得型)

  • 主に暖房の熱(遠赤外線)を室内側で反射
  • Low-Eガラスは室内側のガラス面に配置
  • 冬の暖かさを重視したい地域・部屋に向く
  • 南面の窓で「陽だまり感」を得たい場合に適している

※Low-E膜のタイプのよって室外側のガラス面に配置される場合有

遮熱タイプ(日射遮蔽型)

  • 太陽からの近赤外線・遠赤外線の両方を反射
  • Low-Eガラスは室外側のガラス面に配置
  • 夏の暑さを軽減したい部屋、特に西日が強い窓に効果的

建物の方位や季節ごとの悩みによって、適切なタイプを選ぶことが重要です。

5. Low-E複層ガラスのメリット

Low-E複層ガラスを採用するメリットについては、以下のような項目が挙げられます。

  • 1. 室内の暖かさを保つ   外気の冷たさを室内に伝えにくく、室内の暖かい空気を逃がしにくいため、暖房効率が向上します。
  • 2. 結露の発生を低減  ガラス面が冷えにくくなるため、冬場に発生しがちなガラスの結露を大幅に抑えられます。
  • 3. 夏の暑さ対策(遮熱タイプの場合) 日射熱を反射し、冷房効率を高める効果があります。
  • 4. 冷暖房費の削減  断熱性・遮熱性が高まることで、冷暖房のエネルギー消費を抑えることにつながります。

6. Low-E複層ガラスのデメリット

Low-E複層ガラスを採用するデメリットについては、以下のような項目が挙げられます。

  • 1. 初期費用が高くなりやすい  一般的な複層ガラスより性能が高い分、導入コストは上がります。
  • 2. ガラスの色味が変わる場合がある  Low-Eガラスの金属膜の影響で、わずかに緑がかった色に見える場合があります。気になる場合は「クリア色」など色味が控えめなタイプを選ぶこともできます。

7. リフォームでLow-E複層ガラスを選ぶ際のポイント

リフォームでLow-E複層ガラスを選ぶ際のポイントについて触れておきます。

①既存サッシに取り付けられるかどうか

複層ガラスは厚みがあるため、サッシの溝幅を確認する必要があります。

部屋の方位に合わせた機能選び

  • 西日=遮熱タイプ
  • 寒さ対策=断熱タイプ
  • 南面で日差しの暖かさは残したい=断熱タイプ

※部屋の用途・方位・季節で適した機能が変わります。

  色味・見た目もチェック

Low-E複層ガラスの金属膜の色が気になる場合はクリア色を選ぶなど、景色の見え方も事前に確認しておくと安心です。

8. 真空タイプのLow-Eガラスという選択肢も

Low-E複層ガラスの中には、中空層を真空にした「真空タイプ」の製品も存在します。
一般的な複層ガラスより熱の伝わりを大幅に抑えられるため、断熱性・結露低減・防音性をより高めたい場合に選ばれることがあります。

真空ガラス製品紹介はコチラ

9. まとめ

Low-E複層ガラスは、窓の断熱性能・遮熱性能を高める代表的なガラスで、断熱タイプ、遮熱タイプ、真空タイプなど、用途に応じた多くの種類があります。建物の課題(寒さ・暑さ・結露・省エネ)や部屋の方位に合わせて選ぶことで、より快適な室内環境を実現できます。