防火ガラスとは?防火設備・特定防火設備の違い・種類・選び方

建築物では、火災が発生した際に炎が広がることを防ぎ、安全な避難や消火活動につなげるため、さまざまな防火対策が求められます。
外壁の「延焼のおそれのある部分」や防火区画などに開口部を設ける場合には、一定の防火性能を備えた「防火設備」や「特定防火設備」などが必要になります。
こうした場所で使用されるのが、防火ガラス・防耐火ガラスです。
防火ガラスというと「網入板ガラス」をイメージする方も多いかもしれません。しかし、防火用途には網入板ガラスだけでなく、一定の条件を満たした網のない耐熱強化ガラスを使用できる場合もあります。
防火ガラスを選定するときは、ガラスの種類だけを見るのではなく、「どこに使用するのか」「どのような防火・耐火性能が必要なのか」「適用できる仕様や認定条件は何か」を確認することが重要です。
この記事では、防火ガラスの基本から、防火設備と特定防火設備の違い、防火区画、遮炎・遮熱性能、ガラスの種類、選定時のポイントまで分かりやすく解説します。
防火ガラス(防耐火ガラス)とは?
防火ガラス(防耐火ガラス)は、建築物に求められる防火・耐火性能に対応するために使用されるガラスです。
外壁の延焼のおそれのある部分や防火区画などでは、使用する部位に応じて防火設備や特定防火設備などが必要になります。
防火用途には、従来から使用されている網入板ガラスのほか、一定の条件を満たした耐熱強化ガラスを使用することもできます。
重要なのは、「防火ガラス」という名称だけで使用できる場所を判断しないことです。
使用する部位に必要な性能と、適用できる仕様・認定条件を確認したうえで、適切なガラスを選定する必要があります。
防火設備と特定防火設備の違い
防火ガラスを選ぶ上で、代表的なものとして、まず理解しておきたいのが「防火設備」と「特定防火設備」の違いです。
大きな違いのひとつが、火災時に求められる遮炎性能の時間です。
防火設備とは?
防火設備は、耐火建築物等の外壁に設ける開口部などに使用されます。
一般的な防火設備(EB)には、20分の遮炎性能が求められます。
例えば、外壁の「延焼のおそれのある部分」に設ける開口部には、防火設備が必要になります。
特定防火設備とは?
特定防火設備は、主に防火区画の開口部などに使用されます。
特定防火設備(EA)には、60分の遮炎性能が求められ、例えば面積区画では、準耐火構造の壁または特定防火設備によって区画します。
防火設備と特定防火設備の違いを比較
基本的な要求性能を整理すると、次のようになります。
| 区分 | 主な要求性能 | 主な使用部位 |
| 防火設備 | 遮炎性能20分 | 延焼のおそれのある部分の開口部など |
| 特定防火設備 | 遮炎性能60分 | 防火区画の開口部など |
| 1時間耐火間仕切壁 | 遮炎性能60分+遮熱性能60分 | 非耐力間仕切壁 |
実際に必要となる性能や仕様は、建物や使用部位によって異なります。それぞれの適用条件を確認して選定することが重要です。
■防火設備・特定防火設備・1時間耐火間仕切壁の違い

「遮炎性能」と「遮熱性能」はどう違う?
防火ガラスを検討するときには、「遮炎性能」と「遮熱性能」の違いも理解しておきたいポイントです。
遮炎性能とは?
遮炎性能は、火災時に火炎を非加熱側へ出さないために求められる性能です。
防火設備では20分、特定防火設備では60分の遮炎性能が求められます。
遮熱性能とは?
遮熱性能は、火災時に非加熱側の温度上昇を抑える性能です。
1時間耐火間仕切壁では、遮炎性能60分+遮熱性能60分 が求められます。
遮熱性能については、可燃物燃熱温度として、非加熱面の平均温度上昇140℃以下、最高温度上昇180℃以下という基準があります。 防火ガラスを選定するときは、遮炎性能だけでよいのか、遮熱性能まで必要なのかを確認することが重要です。
防火ガラスはどこに必要?主な使用場所
防火ガラスは、建築物のさまざまな場所で使用されます。代表的な使用場所を見てみましょう。
1.延焼のおそれのある部分の開口部
外壁の「延焼のおそれのある部分」に設ける開口部には、防火設備が必要になります。
この用途には、条件に応じて耐熱強化ガラス「パイロクリア」「パイロクリアJ」などを使用できます。
2.防火区画
防火区画は、建物内で火災が発生した際に、火災が広範囲に拡大することを防ぐために設けられます。
防火区画には、面積区画(高層区画)、竪穴区画、異種用途区画、層間区画などがあります。
面積区画
火災が建物内で広範囲に拡大することを防ぐため、建物内部を一定の床面積ごとに区画する防火区画です。面積区画では、準耐火構造の壁または特定防火設備によって区画します。
高層区画
11階以上の部分に設ける面積区画です。高層階での火災拡大を防ぐために設けられ、耐火構造の壁または防火設備などによって区画します。
竪穴区画
階段など、建物の上下階につながる空間を通じて火災が広がることを防ぐための防火区画です。竪穴区画では、準耐火構造の壁または防火設備によって区画します。
異種用途区画
異なる用途の空間を区画し、火災の拡大を防ぐための防火区画です。異種用途区画では、準耐火構造の壁または特定防火設備によって区画します。
層間区画
層間区画も防火区画の一つです。
※今回の記事では、層間区画の詳細な要求性能については扱いません。
3.避難階段・特別避難階段
避難階段や特別避難階段にも、防火性能が求められる開口部があります。
階段室は耐火構造の壁で囲み、壁に設ける開口部には1㎡以内の防火設備(FIX窓)などが必要になります。
出入口については、避難階段では防火設備、特別避難階段では特定防火設備や防火設備が使用されます。
4.昇降路
エレベーターなどの昇降路では、ガラスに飛散防止性能が求められる場合があります。
合わせガラス(JIS R 3205)と同等以上の飛散防止性能を有するガラスが必要となり、防火性能も要求される部位では、「パイロクリア+飛散防止フィルム」や「パイロストップ」などを使用できます。
■防火ガラスが使われる部位

防火ガラスにはどんな種類がある?
防火用途に使用されるガラスには、求められる性能や使用条件に応じてさまざまな種類があります。
ここでは代表的なガラスを紹介します。
網入板ガラス
網入板ガラスは、従来から防火用途に使用されているガラスです。
ガラス内部に金網を入れることで、火災時のガラス脱落を防止します。
一方、金網によって視界が遮られるほか、長期間の使用によって金網が錆び、その影響でガラスが割れる場合があります。

耐熱強化ガラス
防火用途には、網の入っていない耐熱強化ガラスを使用できる場合もあります。
日本板硝子の「パイロクリア」は、フロート板ガラスに特殊なエッジ加工と超強化処理を施した耐熱強化ガラスです。
火災時でも破損せずに火炎を遮断するとともに、ワイヤレスのため、クリアな視界と自然な色調が得られます。

遮熱性能を備えた防耐火ガラス
使用する部位によっては、遮炎性能だけでなく遮熱性能も必要になります。
1時間耐火間仕切壁には、遮炎性能60分と遮熱性能60分が求められます。こうした用途には、ケイ酸ソーダ入り積層ガラスを用いた「パイロストップウォール」などがあります。
■パイロストップ構造図

防火ガラス=網入りガラス?ワイヤレス防火ガラスとの違い
「防火ガラスには網が入っている」というイメージを持たれることがありますが、防火ガラス=網入板ガラスではありません。
網入板ガラスは、ガラス内部の金網によって火災時のガラス脱落を防ぎます。
一方、耐熱強化ガラス「パイロクリア」は、特殊なエッジ加工と超強化処理によって火災時の破損を防ぎ、火炎を遮断します。
さらに、ガラス内部に網がないため、クリアな視界と自然な色調を得られることも特長です。
防火性能に加えて、視認性や意匠性を重視する開口部では、ワイヤレスの防火ガラスも選択肢となります。
■網入板ガラスとワイヤレス防火ガラスの違い

防火設備・特定防火設備にはどのような性能が求められる?
防火設備には20分以上、特定防火設備には60分以上の遮熱性能が求められます。
試験では、所定の加熱時間にわたり、次の3項目に適合することが求められます。
- 非加熱側へ10秒を超えて継続する火炎の噴出がないこと
- 非加熱面で10秒を超えて継続する発炎がないこと
- 火炎が通る亀裂などの損傷やすき間が生じないこと
つまり、防火設備・特定防火設備には、火災時の高温にさらされた状態でも、一定時間、反対側へ炎を通さない性能が求められます。
防火ガラスを選ぶときに確認したい4つのポイント
防火ガラスを選定するときは、「防火性能のあるガラスだから」という理由だけで製品を決めるのではなく、使用部位→要求性能→適用条件→ガラス・仕様という順番で確認することが重要です。
1.使用する部位を確認する
まず、防火ガラスをどこに使用するのかを確認します。
外壁の開口部、防火区画、避難階段、昇降路、耐火間仕切壁など、使用する部位によって必要な防火・耐火性能が異なります。
2.必要な防火・耐火性能を確認する
次に、その場所に求められる性能を確認します。
例えば、
- 遮炎性能20分
- 遮炎性能60分
- 遮炎性能60分+遮熱性能60分
などの違いがあります。
単に「防火ガラスが必要」と考えるのではなく、どの性能が必要なのかまで確認することがポイントです。
3.告示による例示仕様・個別認定などの適用条件を確認する
防火設備・特定防火設備には、建築基準法告示による例示仕様を利用できるものと、個別認定が必要なものがあります。
使用する部位や仕様に応じて、どの条件が適用されるのかを確認します。
4.ガラスだけでなく設備としての仕様を確認する
防火設備・特定防火設備を選定するときには、ガラス単体だけでなく、サッシなどを含めた設備として適用できる仕様・認定条件を確認することが重要です。
使用部位と要求性能、適用条件を確認したうえで、それらに適合するガラス・仕様を選定します。
■防火ガラス採用確認手順

日本板硝子の防耐火ガラス
日本板硝子では、使用する部位や求められる性能に応じて、さまざまな防耐火ガラスをラインアップしています。
パイロクリア
特殊なエッジ加工と超強化処理を施した耐熱強化ガラスです。ワイヤレスのため、クリアな視界と自然な色調を確保できます。
パイロクリアJ
防火設備に対応する耐熱強化ガラスです。
パイロクリアS
防火用途に対応する耐熱強化ガラスです。
パイロストップ
防火区画や耐火間仕切壁など、遮炎・遮熱性能が必要となる用途に対応する防耐火ガラスです。
製品によって対応する用途・仕様が異なるため、使用する際は各製品の適用条件や認定仕様をご確認ください。
防火ガラスについてよくある質問
Q.防火ガラスと網入板ガラスは同じですか?
同じではありません。
網入板ガラスのほか、「パイロクリア」のような網のない耐熱強化ガラスを防火用途に使用できる場合もあります。
Q.網のないガラスでも防火設備に使用できますか?
一定の条件を満たした耐熱強化ガラスであれば、使用できる場合があります。
使用する部位や仕様に応じて、告示による例示仕様や個別認定などの適用条件を確認する必要があります。
Q.防火設備と特定防火設備は何が違いますか?
一般的な防火設備(EB)には20分、特定防火設備(EA)には60分の遮炎性能が求められます。また、それぞれ使用される部位や適用条件が異なります。
Q.防火ガラスはどこに使用しますか?
延焼のおそれのある部分の開口部、防火区画、避難階段、昇降路など、防火性能が求められるさまざまな場所で使用されます。
Q.遮炎性能と遮熱性能は何が違いますか?
遮炎性能は火炎を非加熱側へ出さないための性能、遮熱性能は非加熱側の温度上昇を抑える性能です。1時間耐火間仕切壁では、遮炎性能60分と遮熱性能60分が求められます。
Q.防火ガラスはガラスだけを選べばよいですか?
ガラスだけで判断するのではなく、使用部位、要求性能、告示による例示仕様や個別認定などの適用条件を確認する必要があります。
サッシなどを含め、防火設備・特定防火設備として適用できる仕様・認定条件を確認して選定します。
まとめ|防火ガラスは使用部位・要求性能・適用条件を確認して選ぼう
防火ガラスには、網入板ガラスや耐熱強化ガラスなどがあり、建物のさまざまな場所で使用されています。
選定するときに重要なのは、「防火ガラス」という名称だけで製品を選ぶことではありません。
① 使用する部位を確認する
② 必要な防火・耐火性能を確認する
③ 適用できる仕様・認定条件を確認する
④ 条件に適合するガラス・仕様を選定する
という順番で検討することがポイントです。
また、防火用途に使用できるガラスは網入板ガラスだけではありません。耐熱強化ガラス「パイロクリア」のように、ワイヤレスによるクリアな視界と自然な色調を確保しながら、防火用途に対応できる製品もあります。
建物の用途や使用部位、必要な性能を確認し、適切な防耐火ガラスを選定しましょう。