防火

もしも火災が起こったら…そうは思っても、現実感はなかなか湧いてきません。
「火の元には気をつけているから、うちは大丈夫!」そんな油断が、悲惨な事態を引き起こす可能性があります。
いったん起こってしまったら、決して取り返しのつかない火災。未然に防ぐ対策を講じておくことは非常に重要です。

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火災の延焼を防ぐには

都市部は、住宅が非常に密集しています。そのような地域で、もしも火災が起こったら、被害は周囲へ大きく広がります。火災現場において特に恐いのが、密集地域での延焼です。
そのような隣家への延焼を防ぐ対策として、法律(建築基準法)が定められています。都市部の密集地帯を、「防火地域」または「準防火地域」として指定し、安全対策が義務づけられています。また、延焼によって被害を拡大させないために、開口部を防火戸にするなど、防火設備を設けなければなりません。

防火地域、準防火地域とは?

木造建築物の多い日本の市街地は、常に火災の危険性があります。
そこで、都市の防災のために、重要な地域を「防火地域」及び「準防火地域」と定め、建築物の構造等を規制して、延焼の危険を抑止しています。

市街地の火災を防除するため都市計画法第9条に基づき、各市町村で下記の種類の地域が定められています。

【引用】(社)カーテンウォール・防火開口部協会

防火地域 街の中心部、主として商業地域に指定されることが多い。
準防火地域 防火地域を取りまき、比較的防火上重要な地域が指定されます。

防火地域、準防火地域内においては、一定の大きさを越える建物を「耐火建築物」または「準耐火建築物」としなければなりません。

防火地域

階数 延べ面積(S) 建築物の構造制限 適用条項
≦2階 S≦100㎡ 耐火建築物、または準耐火建築物 建築基準法
第61条
S>100㎡ 耐火建築物
≧3階
(地階を含む)
- 耐火建築物

【引用】月刊「建築知識」2008年1月号54ページ

※上記以外に各市区町村で決められた地域がありますのでご確認ください

防火地域の適用除外

延べ面積(S) 建築物の構造制限 適用条項
S≦50㎡ 平屋の附属建築物で、外壁・軒裏が防火構造の場合 建築基準法
第61条
1.高さ>2mの門・塀で、不燃材料でつくるか、覆われたもの
2.高さ≦2mの門・塀
建築基準法
第61条3号・4号
卸売市場の上家・機械製作工場で主要構造部が不燃材料の場合 建築基準法
第61条2号

【引用】月刊「建築知識」2008年1月号54ページ

準防火地域

階数 延べ面積(S) 建築物の構造制限 適用条項
≦2階
(地上階数)
S≦500㎡ 制限なし
ただし、木造建築物等で外壁・軒裏の
延焼のおそれのある部分は防火構造
建築基準法
第62条第1項
500㎡<S≦1500㎡ 耐火建築物、
または準耐火建築物
S>1500㎡ 耐火建築物
=3階
(地上階数)
S≦500㎡ 耐火建築物、準耐火建築物、
または、令136条の2に規定する
木造3階建ての技術基準に適合する建築物
500㎡<S≦1500㎡ 耐火建築物、
または準耐火建築物
S>1500㎡ 耐火建築物
≧4階 S>1500㎡ 耐火建築物

【引用】月刊「建築知識」2008年1月号54ページ

※上記以外に各市区町村で決められた地域がありますのでご確認ください

準防火地域の適用除外

【引用】月刊「建築知識」2008年1月号54ページ

開口部の規制について

防火地域または準防火地域内にある建築物は、その外壁の開口部で「延焼のおそれのある部分」に、「防火戸」などの防火設備を設けなければなりません。
これらは建築基準法第64条に定めれられています。

延焼のおそれのある部分とは?

延焼に関しては、隣接している2つの建築物の間の距離が重要となってきます。建築基準法第2条第6号には、「延焼のおそれのある部分」として、危険性のある建築物間の距離を定義しています。

※「延焼のおそれのある部分」=「隣接している建築物の外壁間中心線からの距離が、1階は3m以下、2階以上は5m以下の距離にある建築物の部分」
ただし、防火上有効な公園、広場、川や、耐火構造の壁などに面する部分は除きます。

防火設備とガラス

外壁の延焼のおそれのある部分に開口部を設ける場合、遮炎性能、または準遮炎性能のある防火戸などの「防火設備」(旧乙種防火戸)の設置が義務づけられており、「防火ガラス」である「網入板ガラス」や「耐熱強化板ガラス(パイロクリア)」を使用します。

網入りガラス

以前から防火対策用に使われてきたのが網入りガラスです。金属製の網(金網)をガラス内部に入れることで、火災時のガラス脱落を防止します。欠点として、長年使用すると、雨水や結露水によって金網が錆びてしまい、ガラスが割れてしまうことがあります。また金網は目に見えるので、日常生活で視界に入って気になると言う難点もあります。

耐熱強化ガラス

特殊な周辺研磨処理と超強化処理によって、火災時は破損せずに火炎を遮断します。 網のないクリアな外観と自然な色調が得られ、、フロート板ガラスの 6倍以上、強化ガラスの2倍以上の強度があります。 また、万一破損しても破片は粒状になる安全ガラスでもあり、日常の人体衝突などにも安心です。 透明・熱吸・熱反・高性能熱反など豊富なバリエーションが揃っています。

ガラス早分かり!ムービー【パイロクリアの防火性能】

耐火建築物、準耐火建築物の防火設備(遮炎性能)について

耐火性能の高い建築物として位置付けられるビルなどは、開口部の延焼のおそれのある部分に、「遮炎性能」のある防火設備の設置が義務づけられています。
※遮炎性能・・・「屋内で発生する火災」、「建築物の周囲で発生する火災」の両方に対して、加熱開始後20分間、加熱面以外の面に火炎を出さないもの。

防火地域、準防火地域内建築物の防火設備(準遮炎性能)について

都市防火の観点から防火・準防火地域では、戸建て住宅などにも開口部の延焼のおそれのある部分に、「準遮炎性能」のある防火設備の設置が義務づけられています。
※準遮炎性能・・・「建築物の周囲で発生する火災」に対して、加熱開始後20分間、屋内側に火炎を出さないものとなっています。

ガラス関連防火設備

告示で例示されているのは、鉄枠にはめた網入板ガラスに限定されます。アルミサッシとパイロクリアなどの耐熱板ガラスを組み合わせて使用する場合は、「カーテンウォール・防火開口部協会」が取得している大臣認定の仕様や寸法などに基づく必要があります。

火災の煙を防ぐ

火災時にも、ガラスが活躍しています。
火災時に発生するけむりは、一酸化炭素・有毒ガスなどを含み非常に危険です。

このけむりの流出を防ぎ、視界を確保して避難や消防活動ができるように、一定の規模(延べ床面積が500㎡を超えるもの)や、不特定多数の人が集まる建物(映画館、病院、学校、デパート、スーパーマーケット)には防煙壁の設置が義務づけられています。

日本ではすべての建築物は「建築基準法」に基づいて建設されています。

ガラスと防火関係法規 (P82、83に詳しい解説がありますのでご覧下さい。)

火災時のけむりを防ぐ防煙壁とガラス

デパートやスーパーマーケットなどの天井から幅約50cm程のガラスの壁が垂れ下がっているのを見たことはありますか?
火事が発生すると、けむりは横に毎秒0.5~1mの速さで広がり、上には毎秒3~5m、人が駆け足するほどのスピードで昇っていきます。高温のけむりは浮力が大きいため、横に広がるよりも早く急激に天井まで達し徐々に下降します。

そこで高温にも耐え不燃材料(ガラス)で作られた防煙壁は、けむりを横方向へ拡散させません。天井にたまったけむりは、天井に設置された排煙口からダクトを通りファンによって自動的に外に送り出されたり、窓から自然に外へ逃がします。

※不燃材料の素材として、金属板、コンクリート、ガラスがあります。デパートなどではガラスが多く採用されてます。ガラスは、空間に広がりがあって圧迫感を与えない、また同時に視界を確保できるメリットがあります。

ガラス防煙垂壁:スモークフェンスT (ガラス建材総合カタログ:ガラス商品編より)

火事で怖いのは、火よりけむりです。もしもの時は、姿勢を低くしてハンカチなどを口元に当て落ち着いて避難しましょう。

火災の原因

「もし、火事が起こったら・・・」
そうは思っても、なかなか現実的に考えられないものです。
「火の元には気をつけているから、うちは大丈夫」と考える人が多いのではないでしょうか。しかし、火災は発生してからあわてても遅いのです。火災は凄惨な事態を引き起こします。
燃えさかる炎はあっという間に家を包み込み、勢いを増すと近隣の家までも焼き崩します。火災の現場は、壮絶な轟音とともに熱風が吹き荒れ、そこに渦巻く人々の恐怖心は想像さえできません。
起きてしまったら、決して取り返しのつかない火災・・・。大惨事になる前に、未然に防ぐ対策をすることは非常に重要ですね。

火災の原因


消防庁によると、火災の原因第1位は「コンロ」です。次に「たばこ」と続いています。
これらは原因の約4分の1を占めていて、日々の生活のちょっとした不注意から起きていると考えられます。

その次に多いのが「放火」です。
「放火」には、燃えやすいものを家の外に置かない、ゴミは夜出さずに朝出すようにする、家の周りを明るくするなどといった対策が有効的です。

思いがけない火災の原因のひとつに「トラッキング現象」というものがあります。
「トラッキング現象」とは、コンセントにささっているプラグに埃がたまり、そこに湿気が加わり、プラグ間に繰り返し放電が起きてほこりに引火するという現象です。
この「トラッキング現象」を防ぐためには、コンセントの埃をこまめに取り除いたり、さしっぱなしのプラグは抜いておくなど、日々の注意が大切です。

また、凹面状や凸面状、球面状のガラス製品に直射日光があたり、ガラスがレンズのように焦点を結んで発火する「収れん火災」というものもあります。花瓶や猫よけの水入りペットボトルが発火の原因になった例もあるほどです。
これには、まず直射日光のあたる窓際にガラス製品を置かないことで防ぐことができます。

予期せぬところで火災は発生します。
火災の原因に対策すると同時に、発生したときの場合も想定するのも、非常に重要になってきます。